「ドッグフードってどうやってふやかすの?」
「どの状態までふやかすのがベストなのか、いまいちよく分からない…」
「そもそも、どうして子犬のフードはふやかす必要があるんだろう」
ふやかしドッグフードは、生後まもない子犬に与える食事として一般的に知られています。
そのため、ブリーダーやペットショップの店員にふやかしフードを与えるように言われた方も多いはず。
ただ可愛い愛犬に与えるものだから、適当な知識で作るのは怖いですよね。
今回は、そんな飼い主さんの疑問を解決するために動物看護師の筆者が「ふやかしフードに関する知識」をまとめてみました。
今まで知らなかったふやかしフードのメリットや、ふやかす際の工程・注意点まで1つ1つ丁寧に解説していきます。
ぜひ今回ご紹介した知識を基にふやかしフードを作って、子犬の健やかな成長をサポートしてあげてくださいね。
ドッグフードをふやかして食べさせるのは基本「生後3か月まで」
まずはじめに、子犬にドッグフードをふやかして食べさせるのは「生後3ヶ月まで」を目安にしてください。
犬種や個体によって多少差がありますが、一般的に子犬の歯は生後1~2ヶ月ほど経つと生え始めます。
授乳時に歯が当たって痛みが出るようになるのはこの頃で、母犬は歯が当たる痛みから徐々に子犬の授乳を拒むようになります。
とはいえ未熟な子犬の消化器官では、いきなり親犬と同じものを食べたり、食事を上手く消化吸収することはできません。
そのため、犬の祖先であるオオカミをはじめ、野生の肉食動物のほとんどは自分の食べたものを吐き戻してこどもに与えます。
犬が飼い主や母犬の口回りを舐めるのは、親の吐き戻した食事を催促していた子犬時代の名残であり、生き物の本能でもあるのです。
ミルクから移行する食事としては、胃腸に負担のかかりにくい「離乳食」がベストです。
人間の吐き戻しを子犬に与えることはできないので、ふやかしドッグフードで吐き戻しの未消化感を再現しましょう。
ふやかしフードから固いドライフードに移行するのは、乳歯が生え揃う生後3ヶ月ほどが目安です。
ふやかしフードは療養中やシニア犬の食事としても役立つ
ふやかしフードは、療養中で食欲が落ちている犬や、噛む力が弱ったシニア犬の食事としても役立ちます。
私たち人間と同じように犬も歳をとるにつれて水を飲む量が減っていくので、放っておくと体全体が脱水ぎみになってしまいます。
被毛に艶がなくなったり、爪が乾燥してひび割れたりしている場合は、常に軽い脱水を起こしているといってもよい状態です。
その他、犬の脱水は様々な病気を引き起こす原因にもなるので、ふやかしフードでしっかりと水分を補給しましょう。
ただ、元気で食欲があり歯も丈夫であれば、何歳になっても今まで通りの食事でかまいません。
一般的に犬は7歳頃からシニアの領域に入りますが、7歳になったからといって必ずふやかしフードに変える必要はないのです。
歯が抜けてごはんが食べづらそうだったり、食欲がなんとなく落ちている・便がゆるいなど気になる点があれば、一度ふやかしフードを試してみてください。
シニアの領域に入ってからの食事はとにかく喜んで食べられることが一番なので、愛犬の様子をみながらフードの与え方を変えていきましょう。
ドッグフードをふやかす利点と注意点
実際にドッグフードをふやかす前に、ふやかす利点と注意点を知っておきましょう。
食べ物を消化する時間を短縮できる
ふやかしフードのように柔らかい食べ物は消化に時間がかからないので、子犬の食事として最適です。
子犬のうちは消化器官が未熟なので、ドライフードをそのまま与えると消化不良を起こしてしまう可能性があります。
ふやかしたドッグフードは人間でいう「おかゆ」のようなもので、子犬の胃腸にとって優しい食事なのです。
香りがたつことで嗜好性・食欲アップ
ドッグフードをお湯でふやかすと、フードのニオイが強くなって子犬の食欲がアップします。
実際、動物病院では病気で食欲の落ちた犬にふやかしフードを作ることがよくありますが、嗜好性はとても良くなりますよ。
ドライフードをふやかすことでいつもの食事と違う雰囲気を出せるので、今のフードに飽きた成犬にもおススメです。
水分をたくさん摂取できるため、泌尿器や腎臓の疾患を予防できる
水分を十分に摂取できるふやかしフードは、膀胱炎や尿結石、腎不全の予防にも効果的です。
ドライフードはその名の通り乾燥したドッグフードで、水分量はわずか10%ほどしかありません。
その点ふやかしフードは粒の中に水をたっぷり含んでいるので、毎日の生活で不足しがちな水分を補うことができます。
ドッグフードの中の空気が抜けることで胃捻転予防にも
ふやかすことでドッグフード内の空気が抜け、胃捻転の予防につながります。
「ドッグフードに空気が入っているものなの?」
そうなんです。ドライフードは発泡製法で作られているので、粒の中にたくさんの空気を含んでいます。
たくさんの空気を含んでいるということは、それだけ体内に余分なガスがたまりやすいということ。
それにも関わらず、犬の体はゲップなどで胃の中の空気を出すのが苦手な構造をしており、排出が上手にできません。
空気が胃の中にたまりすぎてしまうと、お腹が張って食欲がなくなったり、胃捻転という病気を引き起こしてしまうことがあります。
ドッグフードの中にお湯が浸透すると空気が外に押し出されるので、ムダな空気が胃の中にたまるのを予防することができます。
成長後も胃捻転には要注意!
胃捻転は子犬だけが発症する病気ではなく、成犬になってからも十分起こる可能性があります。
胃捻転とは、胃が大量にガスで膨れあがってねじれてしまい、血流の悪化や周辺臓器の圧迫を起こす病気です。
犬が胃捻転を起こすと腹部がパンパンに膨れ、食欲不振や嘔吐、大量のよだれや水を大量に飲むなどの症状が出るようになります。
軽度であれば胃に針を刺すなどして胃内の空気を抜けば回復しますが、重症の場合は全身麻酔下での手術が必要となることも。
胃捻転は命にもかかわる大きな病気なので、普段の生活でしっかりと予防していかなければなりません。
ミルクとふやかしフードは併用しよう
今まで母乳やミルクを飲んでいた子犬には、ミルクとふやかしフードを併用して与えましょう。
たとえ十分にお湯でふやかしていても、突然ふやかしフードのみを与えるのは子犬の胃腸にとって良くありません。
はじめに与えるふやかしフードの量は、子犬の体重の10~15%程度にすると子犬のお腹にも優しいのでおススメです。
※ブリーダーやペットショップなどで既にミルク離れが出来ている場合は、ふやかしフードのみでOKです。
この通りにやってみて!ドッグフードの簡単なふやかし方
それでは、実際にドッグフードの簡単なふやかし方をご紹介していきます。
家にある道具だけですぐに作れるので、ぜひ気軽な気持ちで挑戦してみてくださいね。
- フード
- 食器
- お湯(犬用ミルク)
- ラップ(ビニールでも可)
フードを1食分お皿に入れる
ふやかすフードの形状・サイズはどんなものでも構いません。
ドッグフードはふやかすと3倍くらいの大きさになるので、食器は多少スペースに余裕のあるものを使ってください。
あまり薄いお皿だとドッグフードがしっかりと浸かるくらいお湯を入れることができず、ふやかしに失敗します。
普段薄めの食器で愛犬にごはんを与えている場合は、いったん他のお皿を使ってふやかすようにしましょう。
タッパーを使うとムラなくふやける
食器でドッグフードをふやかす方法では、どうしても下面しかお湯に浸かりません。
ある程度時間が経てばじわじわとフードの内部までお湯が浸透してきますが、完全にふやけるには20分ほどかかります。
できるだけふやかし時間を短縮し、かつ全体をムラなくふやかすには、フタ付きのタッパーを使った方法が簡単でおススメ。
耐熱タッパーにフードとお湯を入れてフタをし、5~10分したら両面ムラなくふやかすためにひっくり返します。
ひっくり返す前に必ずフタを開けること
5~10分後にそのままひっくり返そうとすると、熱膨張を起こしたタッパーからお湯が漏れてしまいます。
これはタッパーの中の空気が温められたことで膨張し、タッパーとフタの間にわずかな隙間ができるせいで起こります。
タッパーをひっくり返す時は1度フタを開けて軽く振り、タッパー内部にたまった空気を逃がしてからにしてくださいね。
お湯を沸かす
ドッグフードをふやかす時に使うお湯を沸かしておきましょう。
犬用ミルクを使う場合はあらかじめ冷蔵庫から出しておき、コップなどに開けてから電子レンジで加熱します。
お湯の温度はあまり気にしなくてOK
沸かすお湯の温度はあまり神経質にならず、表面にポコポコ泡が出てくる頃を目安にすればOKです。
よく「50度以上のお湯はビタミンなど必要な栄養素を壊してしまうのでダメ」といわれていますが、コレは間違った情報です。
確かにビタミンは熱に弱い物質ですが、半数以上のビタミンを壊すためには少なくとも60度のお湯に3日ほど浸ける必要があるのです。
いくらビタミンが熱に弱いとはいえ、ドッグフードをふやかす時のお湯程度で成分が壊れることはありません。
そもそもフードを浸けておくうちにお湯の温度は徐々に下がっていきますので、あまり心配しなくても大丈夫ですよ。
ただし、沸騰させすぎるとフードがふやけているか触って確認する際にヤケドする可能性があるので、ほどほどにしてくださいね。
人間用の牛乳ではなく、必ず犬用ミルクを使って
犬用のミルクには乳糖を分解する成分ラクターゼが添加されているので、下痢の心配がありません。
犬は牛乳に含まれる乳糖を上手く分解することができない体質をしており、人間用の牛乳を与えると腸に負担がかかります。
子犬のうちはちょっとした体調不良が命にかかわることもあるので、ふやかし時は必ず犬用ミルクを使用してください。
粉ミルクなら栄養が豊富で使い勝手も良い
液状のミルクと違って、粉ミルクは使いかけでも保存が効く使い勝手の良い商品です。
またドッグフードをふやかす時の濃さも粉の量によって調節できるので、子犬の好みに合わせた食事を用意することができます。
商品によっては、子犬の免疫力を強化する成分や腸内環境を整える成分など様々な栄養素が添加されているものもあります。
お皿に入れたドッグフードにお湯をかける
お皿に入れたドッグフードの上から、沸かしたお湯をかけます。
勢いよく入れるとドッグフードがお皿の外に出てしまうことがあるので、ゆっくりと入れていきます。
ポットのお湯を使う時は、はねたお湯で手をヤケドしないように気を付けてください。
お湯の量はフードがひたひたになるくらい
ドッグフードをふやかす時のお湯の量は、フードがひたひたになるくらいがベストです。
ふやかした後のお湯にはフードに添加されていた栄養素が溶け込んでいるので、捨てずにそのまま与えます。
あまり水分が多すぎるとそれだけでお腹がいっぱいになってしまい、肝心のドッグフードを残してしまう可能性があります。
ふやかす時のお湯は多すぎず少なすぎず、ドッグフードが軽く浮くくらいのがちょうどいい量です。
フードに密着させるようにラップをかけて、10~20分放置する
ドッグフードがふやけやすくなるように、ラップやビニールをフードに密着させるようにかけておきます。
こうすることで普通にお皿にラップをかけるよりもムラなくフードにお湯が浸透しやすくなるため、ふやかし時間の短縮になります。
10分くらい放置したらラップの上からフードを触ってみて、まだ固さが残っていればもう10分くらい放置してください。
指で簡単につぶせるかチェックする
ドッグフードの見た目が完全にふやけたら、一番小さい粒を選んでつぶしてみましょう。
親指と人差し指でつまんだまま簡単につぶせるようなら、中までしっかりとお湯が浸透した証拠です。
もし芯が残っていて中心が固い場合はそのままあげると消化不良を起こす可能性があるので、電子レンジでチンしてください。
ただしプラスチック製の食器は熱に弱く、加熱すると界面活性剤や着色料などが溶け出す危険性があるため、レンジは使えません。
またステンレス製の食器を電子レンジにかけた場合、レンジ内の温度が上がり過ぎて火花が出て、最悪は火事になることも考えられます。
電子レンジ不可の食器を使っている時は、必ず別のお皿かラップなどにうつしてから電子レンジにかけるようにしてくださいね!
時間があれば実践したい!ドッグフードの完璧なふやかし方
もし時間に余裕があるなら、パテ状のふやかしフードを作ってみましょう。
パテ状のふやかしフードは通常よりも手間がかかりますが、そのぶん子犬の消化吸収率をグッとあげてくれます。
お腹の調子が良くない成犬や消化能力の落ちたシニア犬の食事としても役立つので、作り方を知っておいて損はありません。
- フード
- 食器
- お湯(犬用ミルク)
- かき混ぜる用スプーン
ドッグフードを細かく砕く
できればお湯でふやかす前に、あらかじめドッグフードを細かく砕いておきましょう。
この時できるだけ細かくしておくことで、次の「フードを混ぜる」という工程が圧倒的に楽になります。
実は、ドッグフードは犬の嗜好性を高めるために一粒一粒が油でコーティングされています。
しかし油には水をはじく特性があるので、軽くふやかした程度では混ぜるのに思いがけず時間がかかったり、芯が残ったりすることも。
あらかじめハサミで半分に割っておくか、1食分を袋に入れて上から叩くようにつぶしてからお湯を入れると、ふやかし時間の短縮になります。
フードを砕くのが大変な時は、オクソーチョッパーやフードクラッシャーなどの道具を上手に使って手間をはぶきましょう。
ちなみに、ドッグフードは空気に触れた部分から酸化して風味が落ちていくので、面倒でも必ず毎食ごとに砕くようにしてください。
ドッグフードを砕くのに役立つアイテム
お湯をかけたドッグフードにラップをし、5~10分放置する
上でご紹介した方法と同じように、お皿に入れたドッグフードの上からお湯をかけていきます。
ドッグフードがひたひたになるくらいまでお湯を入れたら、フードに密着させるようにラップをかけましょう。
5~10分放置した後でラップの上からフードを押し、ある程度柔らかくなっていれば次の工程に移ります。
スプーンで軽くほぐし、沸かしたお湯を少しずつ加えながら混ぜる
ふやけたドッグフードにお湯を少しずつ入れながら、スプーンでほぐし混ぜていきます。
初めはお麩のような感触ですが、何度も繰り返し混ぜていくうちにフードの形や感触はなくなっていきます。
一度に多くのお湯を入れてしまうとシャバシャバになって混ぜづらいので、水分が減ってきたら加えるようにしてください。
好みのパテ状になるまでスプーンで練っていく
ふやかしフードが好みの形状になるまで、スプーンを使って練っていきましょう。
フードの形状は、加えるお湯の量によって「あんこ状・おじや状・スープ状」など様々な状態に変えることができます。
ふやかしフードの状態は、犬の体調・体の状態・好みに合わせたものをそのつど選んで作るのがベストです。
愛犬の食いつき具合を確認しながら、最適なふやかし具合を見つけてくださいね。
あんこ状 | おじや状 | スープ状 |
---|---|---|
・固いドッグフードに移行しやすい ・食べごたえがあるので満腹感がある |
・水分量が適度にある ・トッピングを絡めやすい |
・消化吸収率が1番良い ・食欲がなくても食べやすい |
ふやかす際の注意点
ふやかしドッグフードを作る時には、注意しなければいけない点がいくつかあります。
どれも全年齢に共通して守ってほしい注意点ばかりなので、しっかりと頭に入れておきましょう。
(1)ミネラルウォーターは使わない
人間が飲んでいるミネラルウォーターは、ふやかし用のお湯として使ってはいけません。
なぜなら、犬にとってミネラルウォーターはミネラルの含有量が多すぎて、尿路結石などを引き起こしかねないからです。
ただし、ウォーターサーバー用の水としてよく飲まれている「軟水」はミネラル含有量が低いので飲ませてもOK。
ドッグフードをふやかす時のお湯は水道水か、ミネラル含有量の低い軟水を選ぶようにしましょう。
軟水と硬水は「硬度」が違う
軟水と硬水の違いは、硬度が120mg/L以下か以上かです。
硬度とは、水1000ml中に含まれるカルシウムイオンとマグネシウムイオンの量を表した数値のことです。
硬度が120mg/L以下の水は軟水、120mg/L以上の水は硬水と呼ばれており、口当たりの良さがそれぞれ違います。
(2)使ったお湯は捨てないで!
ふやかしたお湯にはフードの栄養素が溶け込んでいるので、捨てずにそのまま与えてください。
お湯の量が少ない・湯温が低いなどが原因でうまくふやけなかった場合は、お湯を足してから電子レンジへ。
子犬に与える時にほんのり温かいくらいの温度が理想的ですので、熱くなり過ぎていないか指を入れて確認しましょう。
(3)フードは中までしっかりとふやかそう
ドッグフードをふやかす時は、中までしっかりとふやかすことが大切です。
外側はふやけているのに芯が残っていたり、内側がカリカリの状態では、かえって子犬の胃腸に負担がかかります。
もし子犬の便にフードの残骸が混じっているなら、それはふやかしフードが十分にふやけていない・消化できていないという証拠です。
固いドッグフードはふやけるのに時間がかかるので大変ですが、子犬の健康を第一に考えて確実にふやかしてあげてくださいね。
重要なポイントまとめ
- 子犬にふやかしフードを与えるのは、乳歯が生えそろう生後3か月まで
- ふやかしフードのメリットは「胃腸に優しい・食欲増進・水分補給ができる・病気予防に役立つ」
- ふやかしフードは、歯の弱ったシニア犬や病気療養中で食欲が落ちている時にも役立つ
- ドッグフードをふやかす時のお湯の温度くらいではドッグフードに添加されたビタミンは壊れない
- 硬水のミネラルウォーターは犬の体によくないので、水道水か軟水の水を使うようにする
- 人間用の牛乳は子犬がお腹を壊す可能性があるので、必ず犬用のミルクを使用する
- 芯までしっかりとふやけるように、必ずドッグフードにラップを密着させてから放置すること
- お湯の中にはフードの栄養がとけ込んでいるので、捨てずにそのまま子犬に飲ませること